白い花の舞い散る時間

白い花の舞い散る時間 (コバルト文庫)

白い花の舞い散る時間 (コバルト文庫)

読んでみた.読み返してみたいきもする.
ヒロイン達と同じ年代の時には,自分という男の子はもう,十分におばかさんでした.もう少し若いときには,同世代の少女達に対しては,裏表があって,秘密があって,狡くて,汚くて,怖いといった何か漠然とした嫌悪感というか恐怖というかそういう感情をもってたりして,でもそれ以上に女の子が好きで,結局おばかさんなのでした.今思えば,つまりは僕らより女の子達の方が少し大人だったのだと,そう思って片づけるのです.
さて,この話の中では少女達がネット上での人格の上にもう一枚仮面を被って,そして,自分の出生に関わる秘密を告白しあいます.うち解けて,洗いざらい話しているようでも,作為を以て人をだまそうとしている人や,また本当に裏表のない人もいて,そうして繰り広げられる人間模様が緊張感をもって描かれており,読んでいて自然と引き込まれました.あと少女達の心の暗部にスポットを当てているのは,コバルトでは珍しい作品だと思います.で,読み終えて,やっぱり女の子は怖いなどと,中学生みたいな事を思うのでした.
あとがきや,webコバルトのインタビューを見るに,この人はほんとにコバルト育ちで,他に何もないというか,小説家としての顔以外が一切見えてこないのが,失礼ですがやや不気味な感じがします.いえ,それは単にわたくしが,長期的な集中力がないというか,一本の槍をも持たない凡人であるが故のひがみにすぎず,七年間書き続けて,やっとデビューを掴んだこの作者の情熱や努力に畏怖を感じるのだと.つまりそういうことです.