さまよう愛の果て

作者買い

さまよう愛の果て 失われた王国と神々の千一夜物語 (コバルト文庫)

さまよう愛の果て 失われた王国と神々の千一夜物語 (コバルト文庫)

悲恋です.舞台はアラビア半島ですかね.
親の仇に恋をするってのはありがちと言えばありがち.鸚鵡の語る物語を歌う吟遊詩人が家出少女にお伽話を聴かせ,自分たちと物語の恋人達が重ね合わせされていく,ロマンチックな話し.
全体的に黄昏れというか宵闇を思わせる静かな雰囲気の文章で,とてもムードが出ています.流石です.
話がそれますが,
谷先生の描くヒロインはとても主体的で行動力があって,清々しい.反面,ヒロインを取り囲む閉塞的な逆境も同時に描かれるわけで,今回はその逆境がヒロインの家庭環境に設定されていて,なんだかフェミニズム小説っぽくもなっています.
女性に結婚の自由のない古い時代を舞台にして,その中で自由な恋愛を目指少女っていうのは,ある種のヒロインの典型でしょうが,しかし実際そういう話しって古い少女漫画とか,コバルト文庫でしかもうお目にかかれないよなぁとかふと思ってみたり.言い換えると,障害のある恋愛一般はふつーに描かれ続けてますけど,その障害に家長父制が取り入れられているものは最近の少女漫画とかでは多分少ないよねってこと.(読んでないけど 汗)NANAのヒロインとかは完全に解放後の女性像だと思いますし,今の若い子供はその点では十分に解法されているということかなぁと思ってみたり.