リリカル・ミステリー

漸く三月の新刊に手を付けられた.(先月買ったものもまだ一冊読んでない)

白い花の内容をすっかり忘れていたので読み直す羽目に....
ヒロインが本人の知らぬ間に敗北しているミステリーって...白い花に出てくる都さんはどことなく負け犬の匂いがぷんぷんしますので,その過去である本作で彼女が勝ちきれてないのは当然と言えば当然なんですが.
作中の都さんは半端に頭が良いいが人を見る目が無いというか,自分の力を過信するあまり,自分より思慮深い他人の存在を想定していない.狙われる身であるものだから,周りを警戒しつつも,危機は自分で回避できると思っているような軽率さがあって,考えることがいちいち空回りしています.それは都さん自身のせいというより,圧倒的に情報不足だという事に尽きるのですが.敵に捕捉されながら自分が敵を捕捉できていないというのはあまりに不利で,ちょっと気の毒でもあります.てゆーかいろいろと後味がわるい.
本筋では無いですけど,作中で紅茶にまつわるエピソードが多かったのですが,都嬢は出された紅茶が苦かったり飲み損ねたりで,作品の終わりまでには,おいしい紅茶を飲んでやる,とかなり思い入れを深めています.このへんが,白い花での亜梨栖と伶沙の紅茶の趣味に受け継がれていると思うとおもしろいかも.
それから宵子...じゃなくて初音さんですね.一番怖いのはこの人ですね,やっぱ.すごい猫です.ここぞと言うときに頭の切れるキャラだとは予想していましたが,まんまと騙されました.この後,年を経ずして初音に子供が出来る前に,都が紫草館に身を隠していることからしても,教壇の都の地位はまんまと初音によって追われたようです.またしても気の毒です.
そんな都さんも自分の娘などを利用して,初音の娘に復讐を企てるのが白い花だったのですが,ここでは都の次女であるところの瑞姫の腹黒さが勝って,計画は失敗しています.そういえば,瑞姫(の本性)と都は性格が似ているというとか似たようなカリスマを備えていますってゆーかキャラが被っています.白い花で宵子と瑞姫が少し衝突することも,本作と対応していて面白いです..
それから,最後で初音の台詞の解釈というか,璃花と深哉の都への評価は不合格だったと言うふうにわたくしは解釈します.むしろこの辺の初音と蝶の二人とのやりとりは,初音が璃花と深哉に都を見限りるように布石を打っているというか,不合格だという結論を導かせているように見えます.この辺りからも初音は怖いひとだなぁと思ったり.